九州大学ロゴ 池田浩研究室 九州大学大学院 人間環境学研究院社会心理学/産業・組織心理学

メインテーマ「チーム(集団)の効果的なマネジメント」

どのようなチーム(集団を含む)も果たすべき課題を抱えています。チームがその課題を効率的かつ効果的に達成するための条件やメカニズムを明らかにすることは,グループ・ダイナミックスや産業・組織心理学などの専門分野が追求してきた大きな研究課題です。

これまでは,「チーム(集団)の効果的なマネジメント」というメインテーマのもとで,学部から大学院時代は主に,チームの中心となる「リーダー」に着目し,効果的なリーダーシップを発揮する条件として「リーダーの自信」に関する研究に取り組んできました。
しかし,チームの状態やチームのメンバー同士で交わされるダイナミクスな現象にも着目する必要があると感じ,「チーム力」や「チームメンタルモデル」に関する研究に取り組んでいます。
また,最近では,チーム力を育成・強化するリーダーシップのあり方として,メンバーやチームを支えて奉仕する「サーバント・リーダーシップ」の研究にも取り組み始めています。

テーマ1:サーバント・リーダーシップの発生機序と効果の解明

キーワード

サーバント・リーダーシップ、マインドセット

概要

従来のリーダーシップは、リーダーがフォロワーの上にたち、トップダウン的に指示や命令するスタイルを前提としてきました。しかし、フォロワーの自律性を促すために、リーダーがフォロワーを下から支え,奉仕する新しいスタイルとして「サーバント・リーダーシップ」に関心が集まっています。

こうしたサーバントリーダーシップは、フォロワーとの信頼関係を構築するだけでなく、フォロワーの自律性や、職場レベルでも良好な関係構築に寄与することを明らかにしてきました。

主な成果は下記の通りです。
池田 浩・黒川光流(2018). サーバント・リーダーシップの波及効果と職場活性化 日本リーダーシップ学会論文集, 1, 24-30.
池田  浩 (2016). 従業員のポジティブメンタルヘルスを引き出すサーバント・リーダーシップ可能性 産業ストレス研究, 23(3)  , 217-224.

またサーバントリーダーシップに関する従来の研究について体系的に整理したものは下記をご参照下さい。
池田浩(2017). サーバントリーダーシップ 坂田桐子(編著)(2017).  社会心理学におけるリーダーシップ研究のパースペクティブⅡ ナカニシヤ出版

テーマ2:組織で働く従業員の「ワーク・モチベーション」の測定とそれが生起する心理的メカニズムの解明

キーワード

ワークモチベーション、社会的貢献感、方向性、持続性、強度

概要

ワークモチベーションは組織のパフォーマンスに寄与する重要な変数です。これまで多くの研究や理論が提唱されてきましたが、主に3つの研究に取り組んでいます。

1.ワークモチベーションを適切に測定する尺度の開発

ワークモチベーションは心理学や経営学で注目される概念であったにも関わらずそれを適切に測定する尺度が十分に存在しませんでした。そのことから、武蔵大学の森永雄太教授と共同で、「多側面ワークモチベーション尺度」を開発しています。既に、多くの企業でこの尺度が用いられています。
研究成果は下記を参照のこと。
池田  浩・森永雄太  (2017). 我が国における多側面ワークモチベーション尺度の開発  産業・組織心理学研究   30(2), 171-186.
池田  浩 (2017). ワークモチベーション研究の現状と課題: 課題遂行過程から見たワークモチベーション理論 日本労働研究雑誌, 684, 16-25.

2.ワークモチベーションの源泉としての「社会的貢献感」の効果

ワークモチベーションの源泉には、報酬など様々なものがありますが、特に安全の現場など、与えられたことをきちんとミスなく取り組むことが求めらる職務やお客様からのクレームやトラブルに対応することが求められる職務において、特に有効な源泉として「社会的貢献感」の概念を見いだし、その有効性を明らかにしています。

有吉美恵・池田 浩・縄田健悟・山口裕幸  (2018).  ワークモチベーションにおける社会的貢献感の役割:コールセンター受電業務オペレーターを対象とした調査研究産業・組織心理学研究, 32, 3-14.

テーマ3:組織における「感謝」感情の機能

キーワード

感謝、視野の拡張、協力行動、ポジティブ感情

概要

多くの企業において「感謝」が経営理念に掲げられています。また最近では、職場のコミュニケーションを活性化する目的として「感謝カード」が運用されていますが、その多くは「感謝されること」に重きを置いた施策です。
しかし、心理学では、感謝されることよりも、むしろ自らが「感謝すること」の方が大きな効果をもたらすことが明らかにされています。
これまでも、感謝することが①視野を拡張し、②他者への協力行動や先取り行動を行う、ことを明らかにしています。
主な成果は下記の通りです。

池田 浩 (2015).  組織における「感謝」感情の機能に関する研究 2015年度組織学会研究発表大会発表論文集, Pp.120-125.

また、ほくとう総研の雑誌にも『「感謝」のマネジメントが組織を活性化する』の原稿を寄稿しています。

テーマ4:チーム力

キーワード

チーム力,チームワーク,チームメンタルモデル

概要

チームが期待される成果(業績や創造性,革新性)を発揮するうえで「リーダーシップ」は重要な問題ですが,それによって成果を生み出すためには,「チーム力」が備わっておく必要があります。

テーマ2では,課題の変化を意識した「チーム力」の概念を考案しています。

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テーマ5:リーダーの自信

キーワード

リーダーの自信,変革型リーダーシップ,自己期待・他者期待の充足,経験の内的処理

概要

リーダーシップ研究において従来看過され続けてきた「リーダーの自信」(必要とされる役割行動をリーダーが確実に行えるという可能感)の概念を新たに提唱し,それに関連する研究を進めてきました。

リーダーの自信獲得モデル

リーダーの自信獲得モデルでは,自己の経験から(1)他者期待(重要他者からの期待)および自己期待(自らの目標や価値観)を充足できていること(経験の結果としての成功),そして(2)経験を振り返ること(経験のプロセスからの学習)によって自信は獲得されることが明らかになりました。
すなわち,このリーダーの自信獲得モデルでは,自信の獲得が,経験の長さや経験の有無によって決まるのではなく,むしろ経験の内的処理のあり方によることを示唆しています。
詳しくは,池田・古川(2005, 2006),池田(2007b)をご参照下さい。

リーダーシップを発揮させる条件としての「リーダーの自信」

また,高い自信を保持するリーダーは,そうでないリーダーよりも,困難な課題においても,必要な役割行動を発揮し,結果として高いパフォーマンスを上げていることも明らかになりました。
詳しくは,池田(2007a)をご参照下さい。

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